Story
ストーリー
父が帰ってきた。家族のもとへ、ではなくお世話になった人のために。
初老の男が、旧い校舎の廊下を歩く ひとつの包みを大切そうに抱えて──
奥村家の主・賢一は9年前、家からいなくなった。仕事の失敗が原因で、故郷である京都と家族を捨てたのだ。賢一を失った妻の葉子は、残された子供の宏志と恵美を女手ひとつで育ててきた。
ある日、賢一を京都で見かけたという連絡が宏志に入る。手がかりをたどるうち、父との再会を果たす宏志。しかし賢一は、家族に会うためではなく、失踪先でお世話になった女性のお骨をその実家に届けるために帰ってきたのだった。
父が帰ってきた理由が自分たち家族と会うためでないことを知り、宏志は複雑な思いを抱きつつも、賢一が京都にいることを恵美に告げる。まもなく結婚を控える恵美は、やるせない思いをぶつけつつも賢一に結納に出席してほしいと打ち明け、家に招き入れる。母の葉子には何も告げずに……。いよいよ奥村家の四人は9年ぶりに揃うのだが──